先日、ジョルジュ・ブラックの「メタモルフォーシス」のシリーズを観に行きました。
ブラックのキュビスムの絵画は何枚もみて来ておりましたが、今回は晩年のジュエリーや陶磁器といった立体物の展示。ブラックがそういったものをつくっていたことを知らなかったのでとても興味がありました。
メタモルフォーシスというタイトルのもと、絵画としての平面的なモチーフが同じ意匠とバックボーンをもちながら、陶器、ジュエリー、ガラス、タペストリーと素材を変えて何度も登場するのは、呪術的な強い意思を感じさせられます。ギリシャ神話の神々をブラック独自の表現されたモチーフが余計にその思わせるのかもしれません。
アーティストとして自身のアイコンを持ち、繰り返し使用することは非常有効な手段ですが、マテリアルを変容させつつ行っていくスタイルとしては、ブラックはなかなかの先駆者かもしれません。
少し話が変わるのですが、このモチーフを繰り返し変容させ、アクセサリーやアートピースに落とし込んで作品をつくる共通のスタイルを持つアーティストにベルギーのクリストフ・コパン(CHIRISTPHE COPPENS)を思い出しました。
コパンは以前は帽子を中心としたファッションデザイナーでしたが、毎度発表されるアイテムは非常に個性的かつ手の込んだアイテムばかりでした。彼は数年前よりデザイナーを辞め、アーティストとしての活動を始めました。
もちろん美術品としての作品も好きなのですが、私はどうしてもアクセサリーやストールなど用途がある中にアートが詰め込まれた、ブランド時代のコレクションが好きで未だに蒐集しております。
ブラックもジュエリーやタペストリーなどを制作したいとした際、絵画の世界からは格下の仕事として見なされたらしいのですが、最終的にはフランス文化大臣のアンドレ・マルローが「ブラック芸術の最高峰」と絶賛されています。
これはジュエリークリエイターのエゲル・ド・ルレンフェルドなどとの共同制作をすることで新たなインスピレーションをお互いに与えあうことで生まれたコラボレーションの産物です。
日本の茶道具や武具などにもあるように、あえて用途や様式という制約を設け、その枠内ギリギリまでの独創性を持ったプロダクト。この考え方は現代の生活にアートを取り入れるヒントのひとつかなと思いました。
パナソニック汐留ミュージカルで6/24まで。