早水さんの作品は、和紙を漉くところから始まります。和紙作りの全工程を自ら行い、木の板などの支持体に漉き上げた和紙を貼り付け、天然染料や漆を重ねて仕上げる「一閑張」という手法を用いています。
この伝統技法を独自に発展させ、菓子器や皿、盆、箱といった普段使いのうつわから、花器やオブジェに至るまで、多様な作品を生み出されています。
漆には砥粉や桜島の火山灰、金属粉などを混ぜ合わせて層を重ねることで、独特の風合いと重厚な見た目を生み出しますが、実際に手に取ると驚くほど軽やか。
漆器と同様、直接食べ物を載せることができる実用性も兼ね備えています。
今回展示されている作品には、さまざまな表情があります。
「拭き漆」の漆そのものの深み、「白蒔地」の落ち着いた質感、「青蒔地」「黒蒔地」の静かな力強さ、金属素材を取り入れた「錫白蒔地」「アルミ蒔地」の鈍い輝き。そして「灰蒔地」は、鹿児島の火山灰を使用した早水さんの地元への想いが感じられる一品です。
これらの作品は、ひとつひとつが重ねられた時間と手間の結晶です。
その存在感は日常の中でこそ映え、使い込むほどに深まる魅力があります。
ぜひ早水さんの作品を通じて、和紙と漆が織りなす世界をじっくりとお楽しみください。
たくさんの作品をオンラインに掲載しております。
普段の生活に取り入れたくなる特別な一品が、きっと見つかるはずです。
<早水恵一郎 / Keiichiro Hayamizu>
鹿児島生まれ / 多摩美術大学卒
岐阜の美濃にて手漉き和紙の工程を学んだ後、地元の鹿児島にて紙漉きを始める。